青春を取り戻せ!
これじゃ昔飼っていたボンのほうが余程役に立つ。

「右手の看板に各階の部所が記載されておりますから、ご用の階のボタンをお押しくださいませ」

社長室は8階か。ワン・フロアーを全て使ってんのか、やりすぎじゃないの?

僕は取りあえず赤いボタンを押した。

「どちら様でしょうか?」
今度は血の通った女性の声が、天井から聞こえた。

「ええと、水島ですが」

「水島、なに様でしょうか?」

「伺ってませんか?今日おじゃますることになってます、水島高嗣ですが」

「あっ失礼いたしました。水島助教授でいらっしゃいますね。ただいまお迎えにまいります」

「いいよ。エレベーターの乗り方ぐらい知ってるよ。…じゃ、おじゃまするね」

「すみません。お待ちしております」 

僕は二台あるエレベーターの役員専用と書かれたほうのボタンを押した。

8階で降りると、先程の声の主と思われる若い女性が豊満な胸を誇示するように背筋を伸ばして立っていた。

「初めまして、私、社長秘書の山口と申します」

「あぁ宜しく」

彼女は僕の顔をまじまじと見た。

「私の顔に何かついてるかね?」

「いえ。想像していたよりも、あまりにお若くいらっしゃいますので」
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