青春を取り戻せ!

「ありがとう」

「社長はお待ちかねでございます」

僕は肉感的なお尻の後に続いた。一つドアを開けて入ると、そこは十畳程の部屋にデスクといくつかのソファーだけある広過ぎる廊下といった感じを受ける秘書室だった。その突き当りのドアをノックすると白木の声が聞こえた。

僕の心臓は条件反射のようにピリッと強く収縮した。

彼女の開けてくれたドアから中に入ると、満面に笑みを浮べた白木が立っていた。

あたりまえの挨拶が終わると、彼は自慢の8階からの展望を見せてくれた。

得意気な彼の背後に立っていた僕は、東京の街の一望できる窓から、白木を突き落としたいという衝動を抑えるのに苦労していた。

(まぁ焦ることはない。じっくり落としてやればいいんだ!)

そんなことは露とも知らない白木は、指を差して街の説明を繰り返していた。

その後、別棟にある研究所に案内された。

昔からあった小さな小川に架かる橋を越えると、サッカーゴールのあるグランドが見えた。白木は発足まもないチームの自慢をしていた。僕は昔の本社があった2階建てのビルのことを聞いた。
今は社員寮になっているということだった。その隣の建物が昔から変わらず研究所ということだった。

中に入ると、白衣の男女がみな足を止めて会釈してきた。勿論、僕にではなく白木に対してである。幸か不幸か知っている人は見えなかった。そう言えば入社した頃は研究員は何人もいなかった、僕を含めて四人だけだった。それが僕の作った薬のヒットでこれだけの人がふやせるのである。…驚いた世界だと思った。
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