青春を取り戻せ!
「そうだ!?取りあえず、名誉顧問室が出来るまで、二人でこの部屋を使ってもらいましょうか?」

僕は冗談じゃないと思った。横内の顔にも不服の表情がよぎったのを、僕は見逃さなかった。

「水島先生も、所長に何でも聞いて、早くここの生活に馴れるようにしたほうがいいでしょう」

と、彼は朗笑した。……自分のアイデアにすっかりご満悦のようだった。

僕はその日はそれで帰った。


優紀から白木社長の木曜日の出勤時間はいつも11時頃だと聞いていた僕は、横内所長に11時15分前に、ちょっと出掛けて来ますと告げた。

横内はイヤホーンから耳を外すと、「どうぞ、ごゆっくり」と、うれしそうに言った。

彼は僅か二日間だけは僕の目を気にして、短波放送を聞かなかったが、その後は我慢出来なくなったとみえ、文献検索をするふりをしながら、イヤホーンに耳を傾けていた。

僕が一度外に出てから、忘れ物を取りに戻って来ると、コンピューターの画面には株式のチャートが映っていた。

(困ったもんだ。まだ株に夢中か)

彼のばつの悪そうな顔に対して、僕は何も見ていないという顔で、再び外に出ると、真直ぐ駐車場に向かった。

丁度、白いベンツがゆっくりと入って来た。

白木が車から下りるタイミングに合わせて近付いた。

「社長!おはようございます」

「あぁ 先生!おはようございます」
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