青春を取り戻せ!
その時、電話のベルが鳴った。

白木はポセイドンの彫刻が施された大理石のりっぱな電話台に大股で向かった。

「このワイン美味しいですね?」

「ありがとうございます。このボルドーのソーテルヌは、ちょっと甘口なのですが、私は一番好きなのです」

「良いご趣味です」

白木を見ると、受話器を持っている顔が厳しく変わった。

「ご苦労。こちらにつないでくれ」

「…どうも何時もお世話になっております」

白木の声は数秒前の横柄なものから一転して、気色悪いほどへりくだったものに変わっていた。

「えっ、私ですか? 白木という者です」

「待ってください。あなたのよくご存知の人と代わりますから」

「先生、お電話です」
と、白木は受話器を掲げた。

僕は驚いた。……ここに来ているのは優紀以外は知らないはずだったからだ。

「誰からですか?」

「出て貰えばわかりますよ」

僕はグラスを置いて、ゆっくりと電話に向かった。………誰だろう?優紀のはずはない。彼女とは赤の他人ということになっている。そんな疑われるようなことをしてくるはずがない。

………いくら考えても答えは出てこなかった。

「はい。お電話かわりました。水島です」

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