青春を取り戻せ!
反って処分する手間が省けたと思った。

優紀とボンがじゃれあっている間、僕はポケットの中の邪魔な物の処分を考えた。

拳銃を取り出し、よく拭くと、ボンの小屋の中に放り投げた。そして、硝煙の臭いのする手袋を代わりにポケットに突っ込んだ。

僕はボンの首を抱き締めた。
顔をまたも舐めはじめたボンに、最後のキスをして、立ち上がった。

「優紀行くよ」

「まさか? ボン置いてっちゃうの?」

「うん。ボンは7年間も他に仕えたんだ。今更、権利を主張しても迷惑なだけだよ」

「……わかったわ」

と、彼女は頷いたが、腰を上げる素振りはみせなかった。

「車は?」

「タクシーでコンビニエンス・ストアーで降ろしてもらい、そこから、人目を避けて歩いて来たの」

「上出来だ。…さぁもう行くよ」

ボンの頭を撫ぜ続けている優紀の肩を叩いた。

優紀は力なく立ち上がった。

ボンは足に絡み付くように車まで付いて来た。

僕らは車に乗り込んだ。

残されたボンは、車の横で“オスワリ”をすると、僕の顔を一途に見つめた。

車のエンジンをかけた。

ボンは首をそらし、この世のものとは思えないような悲しい声を上げた。

「クゥーン クゥーン …
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