青春を取り戻せ!
それに僕にとって大切なのは、大学よりも、教授よりも、未美だった。

彼女の喜ぶ顔が見たい。しいては、彼女の兄の役に立ちたいという純粋な思いが頭を支配しはじめた。

「わかりました。すぐに辞められるかわかりませんが、とにかく辞表を出してみます」

未美は心の底からの嬉しさを表現するように、宝石のような笑顔を見せてくれた。


翌日、教授に辞表を提出した。

訳を聞かれたが、一身上の都合としか言えなかった。

君には期待していたが、仕方無い、と言って受理してくれた。

その晩、尊敬している水島講師に飲みに誘われた。

引き止められると覚悟していたが、意外な返答だった。

彼は自慢の髭にビールの泡をつけながら

「先を越されたか」

と、言った。

その後、彼は普段の冷静さと打って変わり、ペロンペロンに酔ってしまった。

そして反対に相談を聞く羽目になっていた。

彼はリケッチアという、ウィルスと細菌の中間に当る生物の論文を書いていたが、それが認められ、城南大学のウィルス学研究室の助教授としての勧誘を受けていたらしい。

「悩んでいたが、君の辞職で決心したよ」
と、彼は言った。

「それは困ります」
とは言ったが、最後には肩を組んで夜のふけるまで研究室への悪態をつき合っていた。
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