青春を取り戻せ!
     *

僕は小さな何の設備も整っていない研究室にいた。

ここは八王子にある白木の経営する生体科学製薬株式会社である。

たいそうな名前が恥ずかしくなるような業務内容の会社だった。

主力は配置薬で、これは早く言えば富山の薬売りと同じで、各家庭に救急箱ごと常備薬を置いてきて、使った分だけ月々代金をいただいて回るというものだった。 それの月間売上げは3千万にも満たないようだった。

それと話にも登らない、つまらない医家向けの薬(ゾロ品)を製造販売していた。

セールスの数はかなりいるようだったが、研究員は三人しかいなかった。

初めは絶望した。

…満足な設備もない所でどうやって研究出来るのだ。

そして、三人の研究員は口先ばかりで箸にも棒にもかからない、はっきり言ってボンクラだった。 

しいて良い所を上げると、自然環境が抜群ということぐらいだった。 
裏に小川が流れ、小さな小高い山があった。
その後の僕を季節ごとに、小川は沢蟹やオタマジャクシを、山は栗やキノコ、紅葉を生み、楽しませてくれた。

昼休みになるといつも、その小川の水辺で※従兄妹の未美と、彼女の手作りの弁当を食べた。

(※会社の風紀を考慮してくれという白木社長の頼みで、未美とは従兄妹ということになっていた) 

川のせせらぎと木々のざわめきが、一時現実を忘れさせ、僕らを夢の世界にいざなった。
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