青春を取り戻せ!
(ボン、無事でいてくれ!)

僕は僅かに自由になる前腕部を上下に動かし、硬く握り締めた拳で、自分の膝を叩いた。

手錠の金属が膝にめり込み、ズボンを裂き、皮膚を裂いた。

それでも叩き続けた。

刑事が慌てて手首を取った。

「やめろ!キチガイ!」

僕は押さえ付けようとする力に満身の力で対抗し、上下に腕を動かす、むくわれぬ努力をつづけた。

「くそっ!くそっ!」

「馬鹿なことはやめろ!」

羽がい絞めにされた。

「一度、精神鑑定をお願いしたほうがいいな」 

紺のズボンを黒く染めた血を見ると、ボンの痛みを少しでも代われたような気がして、少し落ち着いた。

一縷(る)の望みを託して、ぼやけた視界でルームミラーを覗いた。

白い体を陽光に輝かせ、飛ぶように追って来ることを願い………。
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