青春を取り戻せ!

抱水クロラールは作用発現がすみやかで、内服後１５分から３０分で就寝し、４時間から８時間作用が持続します。

被害者の尿を分析した結果から、Ｔｒｉｃｈｌｏｒｏｅｔｈｙｌｇｌｕｃｕｒｏｎｉｄｅ（トリクロエチルグルクロナイド）などが検出されましたが、これは抱水クロラールの体内代謝物質です。

これらの割合を測定することにより、体内時間が測定されます。
服用から５，６時間経過していたことがわかりました。
それはつまりですね。薬の効力の切れてもおかしくない時刻ということです。

この問題の時刻に、被告人は被害者をリビングに転がしていた。
そして殺意はあったが決めかねていた状態だったと推測します。
その時、被害者が睡眠から覚醒し、突然、起き上がった。
慌てた被告人は反射的に刺した。
と、いうのが我々の見解です」

検事はしっかりとした口調で言い終わると、勝ち誇った足取りで、裁判長にその薬の分析結果を提出した。

今度は僕が唇を噛み締めた。
…よくもまぁ、こんな見たような嘘がつけると思った。

未美の証言も、第三者の関与によって信憑性がなくなるという仮説は展開できたが、肝心の関与が立証できなかった。

これらの事で、どのくらい裁判官の心を動かせたかは疑問だった。

最後に被害者の部屋から押収されたという、パジャマと歯ブラシが僕の前に置かれた。

検事は、「君の物で間違いないね」と尋ねてきた。

僕は何十回目かの衝撃を受けた。

………間違いなかった！