青春を取り戻せ!


………僕は刑務所に入ると、親族表を書かされた。これに記入した者しか今後手紙のやりとりも面会もできないというシステムになっているのだ。
僕にはほとんど交流もない遠い親戚しかいなかった。
…寂しかった。
頭に浮かんで来たのは優紀とその家族だけだった。

その日も夜中に悪夢で起こされた。

裁判の後は毎晩同じ夢を見ていた。

…憎むべきはあの白木夫婦であった。
これほど人を憎んだことは今までなかった。こんなに自分に凶暴な心がひそんでいたのかと、うろたえるほど二人を呪い続けた。

裁判での予想もしなかった裏切りは、彼らが殺人犯である証明だった。
しかも僕が手離さなかった老化防止薬を奪うために殺人犯に仕立て上げたのは明白だった。

こう考えていくと、未美が僕に近付いて来たのも、僕の勤めていた研究室の教授の発明である老人性痴呆症(アルツハイマー病)の治療薬を自分の物にしようと計画したことからかも知れない?

…いや!?恐らくそうに違いない。

そして、たまたま僕が見付けたイオン交換樹脂が商売になると踏んで、標的を僕に変え、うまく丸め込み、研究室をやめさせ、それが完成すると、奪い取った。

さらにそれが済むと、画期的な何兆円も稼ぎだす可能性のある老化防止薬を意思の固い僕から奪うため、このような手の込んだ悪魔の計画を立てたのだと思われた。

…でも、その為に罪の無い人を殺すのは行き過ぎではないのか、と一瞬思えたが、……あの二人のことだ、どこかで恨みをかっていて、または金の為に殺人をする羽目になり、そして殺したあとの処理に困り、僕に罪をなすりつけた。
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