朝食にワッフル


「こっちは?」

拓人の手がブラウスに触れた。

「こっちも破くよ」

「ちょっ、待って!」

「嘘。冗談」

悪戯っぽく笑う拓人が可愛くてたまらない。

ブラウスのパールボタンが優しく外されていく。そのひとつひとつに体が反応してしまう。肌に張り巡らされた神経がブレるように。

露出した淡いピンクのブラジャー。たわわに実った胸を美しく纏いながら強調している。

「可愛い」

これは拓人のために買ったもの。レースがついているのに清楚に見える。拓人が好きそうなデザインを選んだ。

「これも要らないな」

「うん、要らない。拓人、外して」

「おー、積極的になってきたね。もっと俺に教えて。どこが感じるとか」

じゃ、胸をもっと……って、やっぱり恥ずかしくて言えない。


拓人と付き合いはじめて三ヶ月。体の関係は二回目。


一回目は私の部屋で。その時はどちらかというと私が主導権をとっていたのに今日はすっかり拓人のペース。ちょっと強引で。それが嬉しい。


───仕事から帰る途中、拓人から来たメール。

『お腹すいた。駅前のワッフル買ってきて』

駅前にできたワッフル専門店、オレンジデイズ。店の外にまで甘く香ばしい匂いが漂っている。焼きたてのワッフルは、かりっとさくっとふわっとしていて本気でおいしい。優しい甘さに心も癒される。


今日は火曜日。美容師の拓人が週に一度体を休められる日。メールが来なくてもそのワッフルを買って拓人のマンションへ行くつもりだった。

ファッション雑誌の美容師特集で取り上げられている『仲村拓人』を見て、一目惚れをしてしまった私。

胸をときめかせながら予約をし、お客様として出会った。

背中まで伸ばした髪がショートボブへと拓人の手によって導かれる。

鏡越しに合う視線。

緊張している私の顔。

張り裂けそうな鼓動。

それを見破った拓人。




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