朝食にワッフル
ベッドの上で互いの汗が肌に馴染んでいく。
地平線や水平線が軋むくらい何度も上下を繰り返す。
くびれた体が揺らされる。
まだあまり慣れていない芯に至る感覚。
全感覚が持っていかれる感じがしてシーツを掴むと、浮遊した生命が流星のように揺らめいた。
ベッドという宇宙で煌めき、全ての行為を終えた二人。
それでも私を抱きしめている拓人。
裸と裸の心地よい温もり。
時計がその温もりから現実へと私を連れ戻す。終電が行ってしまったら、魔法が解けて、このベッドもかぼちゃの馬車に戻ってしまう、そんな気がした。
「そろそろ帰らないと。終電なくなっちゃう」
「帰らなくていいって言ったよね」
「それって……」
拓人はホテル仕様の枕の下に手を入れると小さな箱を出した。
ゆっくり開けられる……そこにはダイヤの指輪が雫のように輝いていた。
「水原架織さん、俺と結婚してください」
「はい。よろしくお願いします」
私でいいの? とかそんな臆病な事は聞かない。自信をもって素直でいればいい。
拓人は私の左手薬指に指輪をはめると、体をぎゅっと抱きしめた。
「もう離さないよ」
私の瞳からダイヤのような涙が一粒、零れ落ちた。
明日の朝、温め直したワッフルを二人で食べようと思う。コーヒーを淹れて、陽の当たるリビングで。
【朝食にワッフル*END】