憎しみという名の恋 ~光と影~
side星
やべぇ…。
俺の斜め後ろをちょこちょこ歩いている
闇風に不覚にもドキドキする。
だって、さっきこいつは…。
『ふふっ』
初めて俺に笑顔を見せたんだから。
大口を開けて笑うような、満面の笑みではなかったけど、それでもこいつは確かに、俺の目の前で小さく笑ったんだ…。
闇風があんま表情変えないとか、他のヤツの前では笑わないとか…
そんな確証どこにもなかったけど、でもあの笑顔が、俺にだけ見せた特別だって気がして、俺は闇風を家に送り届けるまで、顔が緩みっぱなしだった。
────
「ただいま。」
「おかえり、星くん」
玄関を開けると、にこやかな表情で出迎えてくれる女性。
おかえりと言われても、この人は俺の母親じゃない。
俺の母親は10年前…。
俺が7歳の頃に病気で亡くなった。
元々身体が弱い人だったらしい。
あまり母さんの記憶はないけど、優しい香りと暖かい手の感触だけは覚えてる。
幼い頃に母親を亡くしたけど、すぐにこうして母親の姉夫婦に引き取ってもらったから、寂しくはなかった。