桃色初恋、甘口キス
中庭に着いて、揃ってベンチに腰掛ける。

「風が気持ちいいね」

愛ちゃんがお弁当を広げながら、ふわりと微笑む。
良かった、お気に入りの場所で少しは緊張がほぐれたみたいだ。

「そうだね。
あ、愛ちゃんこれ」

「ん? なぁに?」

あたしはスカートのポケットから、小ぶりなキャンディを一つ、取り出した。
レモン味のそれを、愛ちゃんの小さな手のひらに乗せる。

「あたしのおまじない。
これから緊張するってときに、キャンディ舐めるの。
愛ちゃんも後でやってみてね」

じっとキャンディを見つめて、愛ちゃんは有難う、とまた微笑んだ。

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