桃色初恋、甘口キス
そんな優しい瞳も、甘い声も、向けないで欲しい。

からかってるくせに。
どうせこのあと、笑うくせに。

赤くなった顔を見られたくなくて、俯く。
黄原はあたしを、離してくれない。

「離してよ、分かったから……」

「ダメ。今離したら逃げるだろ? 
それにお前、分かってない」

言ってみたところで、ますます抱きしめられてしまった。

「からかってるんじゃ、ないのか……?」

はぁ、と、頭の上で黄原がため息をついた。

「今まで本当に悪かったよ。
狼少年だな、俺。
本当のこと言っても、こんなに信じてもらえないなんて……」

ごめんな、と、黄原は何度も何度もあたしに謝った。
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