桃色初恋、甘口キス
「な、青葉。行こう」

「え、ちょっとっ」

黄原は返事も聞かずに、あたしの手を引いた。
あたしは、黄原に引かれていない方の手で、慌てて机の上のカバンを取った。

「手、離してくんない?
恥ずかしい……」

「ダメだって。
離したらお前、逃げる」

う~……。
見破られている。

「どこ行きたい?
何したい?」

校門前で黄原が立ち止まって、尋ねてきた。
どうやら今日は逃げられないらしい。
あたしは観念して、付き合うことにした。

「ん~……。黄原は?」

「え、俺が決めていいの?」

そうだなぁ、と考えた素振りを見せて、何か思いついたのか、黄原はまた歩き出した。
あたしの手を引いたまま。

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