桃色初恋、甘口キス
「うみって、呼んでいい?」

「な、なに、急に……」

真剣な眼差しの黄原から視線を外して、あたしは俯いた。
カップの中の琥珀色に、真っ赤なあたしの顔が写っている。

「さっき、立花さんを瀬田が名前で呼んでるの見たら、羨ましくなった」

ねぇ、うみ、いい?
黄原は真剣だ。

「いいも何も、もう呼んでるじゃないか……!」

あたしは俯いたまま、そう答えるしか出来なかった。

「ありがとう、うみ」

ふんわりと、優しい声がかかる。
思わず顔を上げると、嬉しそうに微笑む黄原の顔。

「黄原……」

なんだろう、これ。
黄原に名前を呼ばれるのは、くすぐったいけど嫌じゃ、ない。
< 73 / 115 >

この作品をシェア

pagetop