優しいカレの切ない隠し事


「あ、はい。ありがとうございます…」

拍子抜けのわたしに、圭介は仕事を続けた。

距離を置こうと提案したのはわたしだし、この様子だとそれを受け入れてくれたんだと思う。

だけど、昨日の今日で、こんなに割り切れるものなんだ…。

ちょっと複雑。

身を翻しデスクに戻ったわたしに、栞里さんが体を近付けてきた。

「陽菜ちゃん、課長と何かあったの?なんだか、二人とも様子がへんじゃない?」

またそれか。

「栞里さんは、よくわたしたちの変化に気付かれるんですね?何でですか?」

言っちゃった、嫌味を。

だけど、いい加減鬱陶しい。

栞里さんのこれみよがしな心配が。

そんなに心配するなら、最初から圭介とキスなんてしないでよ。

すがらないでよ。

二人きりにならないでよ。
< 104 / 192 >

この作品をシェア

pagetop