優しいカレの切ない隠し事


「えっ?松山課長と?」

さすがに驚いたようで、聖也はしばらく言葉を失った。

「ごめんね。本当は、もっと早く話しておけば良かったんだけど…」

「いや、そんなことはないよ。だけど陽菜、課長とうまくいってないのか?」

「え?何で?」

「だって、陽菜は彼氏がいるのに、他の男とキスするような女じゃない。それなのに、オレのキスを拒もうともしなかったじゃないか。何かあったんだろ?」

どうして、分かるんだろう。

聖也は今でも、どうしてわたしを信じてくれているんだろう…。

泣きたくなる気持ちを抑えながら、圭介と栞里さんのことを話そうか迷う。

聖也に話を聞いてもらえたら、どんなに心が軽くなるだろう。

だけど、そんなことが許されるはずもなくて、何も言えなかった。
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