優しいカレの切ない隠し事


百歩、ううん千歩譲って、もし圭介が本当のことを話してくれたら、許す余地を与えてあげる。

だから、話して欲しい。

「いや、そんなに忙しくなかったよ。だから、陽菜が心配することはないんだ。それより、ゆっくり会いたい…」

「わたしは会いたくないの。こんな遅くまで一人で仕事だったんでしょ?」

言葉を遮って、カマをかけてみる。

『一人で』は、わたしの賭け。

お願い、本当のことを言ってよ。

「ああ、一人だったよ。だけど、本当に大丈夫だから」

「一人…?」

何でウソをつくのよ。

栞里さんと一緒だったじゃない。

「それでも、わたしは会いたくない」

電話を切ると、そのまま電源も落とした。

圭介が、わたしに隠し事をするなんて…。

どうしてなの?
< 57 / 192 >

この作品をシェア

pagetop