右隣の彼
「あ・・あのさ~今日はねちょっと大事な話があって来たんだよ」
「大事な話?」
「うん。すごく大事な話」
「まさか会社リストラされたとか?」
相変わらず母は悪いことしか思い浮かばないようだ。
「違う」
「じゃ~~家賃滞納で追い出されたとか」」
おいおいそっちかい!
「違う」
「じゃあ何よ!さっさと言ってよね。お母さんまだ夕飯の支度してんだから」
ここまで来るとツッコミを入れるのもアホらしくなる。
「実はさ・・・・結婚を考えている人がいるんだよね」
『・・・・・・・・・・』
父の無言は最初からだからわかるけどなんで母さんまで無言になるのよ!と思ったけど
話を進めた
「それで近いうちに彼を・・・・2人に紹介したいというか、彼が挨拶したいって
 言ってるんだけど・・・・って聞いてる?」
あんなにうるさかった母が無言で頷いているってことは相当驚いている。
まさか私は一生独身を通すかと思ってたのかもしれない。
「ただね、彼・・岸田くんって言うんだけど多分・・・母さん興奮しちゃうかもしれない」
「どういうことだ?」
え?そこで初めて父さんが喋るって・・・
「私がいうのもなんだけどかなりのイケメンなので・・・」
「ええええ!?」
イケメンって言葉の破壊力は相当なもんだ。
「そう来ると思った。母さんのスーパーハイテンションを岸田くんがみたら
 ドン引きしちゃうので頼むから静かな母さんを演じて欲しいのよ。
 父さんはそのままでいいけど・・・」
だが母は私の話など聞いているのかいないのか
私に岸田くんの写真があるなら見せなさい!としつこいしつこい
でもそれは想定内で実はそんなこともあろうかと昨日スマホで写真を撮っておいたのだ。
私がスマホを両親に差し出すと母は奪うようにスマホを取り上げ
画面にうつる岸田くんを見るなり想像通りのリアクションをした。

「ちょ・・・ちょっと~~なに?このかっこいい男?アンタどこでこんなの
見つけたの?騙されてんじゃないの?」
「会社の後輩ですが・・騙されてませんが」
「本当?年下なのね。ふ~~ん。でもやっぱり親子ね。一美も面食いなんだから!」
なに仲間にしようとしてんのよ。大体私、顔で好きになったんじゃないし・・・・
だがここで何か言っても話は進まない。


「だからね、今みたいなハイテンションをかなり抑えて欲しいの。母さんみたら
岸田くんぶっ飛ぶよ」
横で聞いていた父は肩を震わせ笑ってた。
「静かにできる?」
ちゃんと返事をもらわないと帰れない。
「で・・出来るわよ!そんなこと電話でもよかったじゃない」
「結婚するって電話でいってあなたたち満足する?こういうのは電話じゃないと
思ったから直接話に来たのよ」

私の言葉に母が急に真顔になった。
「わかった。テンション下げるからさあんたと結婚したいって言ってくれた岸田くんに
 会わせて。おめでとうはその時にいうから今日ななし!ねっお父さん」
父はとても嬉しそうに頷いた。

 
< 112 / 118 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop