右隣の彼

聞いてないよ~~!

「はぁ~ごめんね。凄かったでしょ?うちに親ってか母」
肩の力が一気に抜けた私はよろよろしながら岸田くんと歩いていた。
「ううん。俺めっちゃ一美のご両親が好きになったよ」
私とは正反対の笑顔で足取り軽く歩く岸田くんにホッとした。
でも本当に疲れた。
あの母親だよ!
鼻の下を伸ばした母を父はどう思ったのだろうかと私は
何度も父の顔色を伺ったが父も終始ニコニコしてて
出来過ぎだろう父ちゃんと思ったが

帰り際父から
『ちょっと時間がかかったがいい人見つけたな。幸せになれよ』
って言ってくれたときは鼻の奥がツンとして涙腺が崩壊しそうになった。
だが母はというと岸田くんに今度はいつ来てくれるの?
岸田くんだけでも遊びに来てくれて構わないだの、もうあなたは
家族の一員よ!ってこっちが聞いて呆れるほどのはしゃぎっぷりだった。

「私でもあの母のテンションにはついていけない時あるからさ、
 もし不快に感じることがあったら言ってね」
申し訳ない気持ちで岸田くんに視線だけを向けると岸田くんは笑顔で
首を横に振った。
「何言ってんの?素敵な家族だよ。一美は素敵なご両親に育てられて
 幸せだよ。ま~俺の両親もちょっと変わってるから一美のご両親
 なんて俺からしたら普通だよ。ふつう」

・・・・そうだった。
うちの両親に結婚を承諾してもらって終わりじゃなかった!
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