右隣の彼
そうだよね・・・これは私自身の問題だし、それを誰かに協力して
もらおうだなんてずるいよね。
そう思ったらいつまでもここにいるのは良くないと思い帰ろうと
腰を浮かせると駿さんに名前を呼ばれた。
「ごめん、一美さん。ちょっと食材で足りないものがあったから
 24時間開いてるスーパーまでちょっと行ってくるので申し訳ないけど
 店番たのめないかな?」
「え?店番って・・・美由さんがいるんじゃ・・・」
私はきょろきょろと店内を見ると、美由さんの姿とさっきまでいた
常連客もいつの間にかいなくなっていた。
「美由ならもう帰ったんだ。彼女はここで働いている訳じゃないからね」
そ・・そんなだって私これでも一応お客なんだけどと思ったが
駿さんは何だか急いでいる様だったので
「わ・・わかりました。でも早く帰ってきてくださいね」
駿さんはニコッと笑うと店をでた。

私は誰もいない店でやる事もないのでスプモーニの残りを一気に飲み干した。
「あ~~!なんでこんなに岸田くんの事ばかり考えるのよ。
 単なる会社の後輩なのに・・・・」
グラスの口を指の腹でゆっくりとまわす様に撫でた・・・
「もう!岸田くんのばか!」
そう叫んだ時だった。
入り口の扉の開く音がした。駿さんだと思い入り口に目をやると

「ったく・・なんだよ兄貴の奴・・・」
そこにいたのは駿さんではなく岸田君だった。
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