右隣の彼
「一美さん」
「・・・はい」
「弟に・・滋にどうしてもらいたい?」
「どうしてもらいたいって・・・・」
私は・・・・
「嫌いな人だったら別に話しかけられなくてもお昼に誘われなくても
 自分以外の人に優しくしても気にならないよね。むしろそのほうが
 ありがたかったりするよね。でも一美さんは滋に対して
 今みたいな態度を取られるのは凄く嫌なんだよね。だって凄く悩んで
 ここまで来ちゃうくらいなんだから…どうしてもらいたい?」
駿さんは優しい声で私に尋ねるけど質問の内容は私の岸田くんへの
本当の気持ちを確認させるように聞いている様だった。
しかもそれを口に出して言えと言っている。
美由さんも私の言葉を待っているのが表情でわかる。
自分から話した手前言わない訳にもいかず私は今思っている全ての気持ちを言おうとしたが
「あ~~ごめん。それはさ・・・やっぱり僕たちに話すより
 直接滋にぶつけた方がいいと思うよ。」
「え?」
驚く私に駿さんは言葉を続けた。
「僕たちは聞いてあげることは出来ても、それ以上の事は
 出来ない。だって・・・滋の言い分は聞いてないからね。
 滋の事気になってイライラしてるなら勇気を出して
 ぶつけてみな。今の一美さんの気持ちをね」
美由さんは私の思いを聞きたそうにしていたが。駿さんの言葉に
納得したように、そうよね・・そうよねと独り言のように言った。
でも話すきっかけすらもつかめない今の状態でどうしろって言うんだろう。
私は項垂れるように目の前のスプモーニに口をつけた。
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