右隣の彼
「なんで・・・なんで急に冷たい態度とったのよ?私がどんな思いでー」
「冷たくされて寂しかった?」
視界が暗くなったのがわかった・・・・
岸田君に抱きしめられていた
「あたりまえじゃない!」
「一美以外の女の人に優しくしてるの嫌だった?」
「・・・・ムカついた」
岸田君は私の頭に自分の顎を乗せた。
「一美が悪いんだよ」
聞き捨てならない言葉に私は勢いよく身体を離した。
「な・・なんで?私何もしてないじゃない!急に態度を変えた
 岸田くんが悪いのよ!」
岸田君は一瞬だけ悲しそうな表情を浮かべた。
「俺の事・・・・俺への気持ちがわからないって言ったよね。
 だからわからせてあげたんだよ。一美の中には俺がいっぱい映っているってこと
 わからせる為に・・・」
「は・・・はぁ?何それ・・・」
岸田君はドヤ顔で私を見下ろしてるけど私はそれどころじゃなかった。
確かにわからないと言ったけど何がわからせるためよ。
私がこの一週間どんな思いで過ごしてきたと思っているのよ。
怒りが沸々と湧きあがってきた。
握りこぶしに力が入る。このままグーパンチでも浴びせたいそう思ったが
その前に再び抱きしめられた。
「き・・岸田君離してよ!私怒ってるんだよ」
「嫌だね。俺だって・・・辛かったんだから。一美が寂しそうな顔すれば抱きしめたくなったし
 誰もいない会社で一人で残業する姿を見た時何度押し倒そうとしたか」
頭上から聞こえる岸田君はやっぱり私の知ってる岸田君の声だった。
意地悪でつんけんした岸田くんじゃなかった。
私は怒ってるけど、本気で怒る事が出来なかった。
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