右隣の彼

パワー注入!


「先輩の様子がおかしいのって・・・イケメン若社長が原因ですよね」
岸田君に言われ時間差で資料室に行くと私に背を向け資料に目を通しながら淡々と岸田君は話し出した。
いつもの爽やかさが全くなくなった岸田君の声に何と返事をしたらいいのか悩んでしまう。
「返事がないって事は、そのイケメン若社長となんかあったって事なんですね」
疑問形ではない言い方がやけに冷たく感じる。
だが実際は岸田君の言う通りであって否定もできない。
ここはちゃんと本当の事を言うべきだろうか・・・
でも言ったら怒るだろうな~
岸田君にどう言おうかと考えているとフッと笑う声が聞こえた。
顔を上げるとさっきまで後ろを向いていた岸田君が目の前にいて口に手を当てて笑っていた。
「岸田君?」
なんで笑っているのかわからなかった。
「先輩って本当に嘘のつけない人なんですね。思いっきり顔に出てるからバレバレです。」
「え?え?」
顔に手を当てるものの何も変わるわけでもなく。
颯太さんとの約束を言わざる得ないこの状況にうなだれた。
「うち合わせから帰ってきた時から何かあったってわかってたけど、
 普通に聞いても本当の事を話さない事くらいわかってましたよ。
 大方、そのイケメン若社長に口説かれてデートにでも誘われた・・・ってとこですか?」
まるで近くで見ていたかのように岸田君は淡々と話す。
「違う・・・・仕事なの。嫌だけど仕事だから」
課長には粗相のないようにと言われてるし、相手は大口の取引先の社長
今日の約束ははっきり言って仕事じゃない。
だけど颯太さんが仕事と言ったからには仕事になる。そういうものなんだ・・・不本意だけど
「へ~~仕事ですか。で?仕事って何?」
「接待よ。でも・・・接待も仕事のうちよね。課長にも頼まれてるけど今回限りよ。
 浮かない顔は、私接待ってあまり経験ないしそれで憂鬱になってたの。
 それだけよ。」
私の言い訳がましい言葉に納得するわけないのはわかってるけど
言いようがかなった。
でも嘘は言ってない。
私は自分を正当化するよう心の中で言い聞かせた。
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