右隣の彼
「先輩・・・・先輩?・・・津田先輩?」
「え?あっ!どうしたの岸田君」
「・・・いや、どうしたのはこっちのセリフですよ。何百面相してたんですか?
 面白いけど変ですよ」
少し馬鹿にしたような顔で岸田君はちらりと私を見た。
そんな私をもう一人みていた男がいた。夏さんだ
「お~~そういえば津田。九重の若社長元気だったか?」
「ええ・・・元気でしたよ。相変わらずの俺様でしたけど・・・」
俺様だからこんなことになってるんだけどね・・・
だけど岸田君は会話の輪の中に入れないといった表情で私たちの会話を聞いていた。
「夏さん。九重の若社長って?」
「coco studioの社長だよ。俺たちは今の社名になる前の九重陶器の頃
 からの付き合いだからつい九重って言っちゃうんだけどね・・・でも
 あの若社長すんげ~イケメンなんだぞ!下手すりゃ~お前よりも・・上かも
・・・なっ。つ~だ」
ちょっとなんでここで私に振るの?
それになんか視線を感じるんですけど?右隣からなんか感じるんだけど・・・
「イケメンと言えばイケメンだけど岸田君と比べるとか・・・無理」

でも夏さんは颯太さんの方が上だと言い張ってるし・・・なんかだんだん言いにくく
なってきたよ
もうこの話終わってほしいんだけど。
そう思っていたのだが、少々空気の読めない男夏さんのトークは終わらなかった。
「っていうかさ、あの人って津田の事かなり気に入ってたよな~。どうだった?
久しぶりに会って、お前彼氏いないからちょうどいいんじゃね?
いまなら玉の輿もゆめじゃねーんじゃね?」
おいおい
同じこと言ってた人いたよね~
何?私ってやっぱりそういう立ち位置なわけ?
30過ぎで独身だと恋愛とかすっ飛ばしていきなり結婚しちゃえば?的な
流れにしちゃってさ・・・っていうか私彼氏いますけど、しかも相手は右隣にいますけど?

内緒だけど

なんて反論したらいいかわからない。
そんなことないです。って言っても何か言ってきそうだしな~~
またも返事に困っていた時だった。

「夏さん・・・課長がこっち見てますよ」
岸田君の一言で夏さんは慌てて仕事を再開した。
ほっとしたのもつかの間
一枚の付箋を岸田君が差し出した。そこには

『聞きたいことたくさんあるので資料室で待ってる。時間差で来て』
なぶり書きの付箋が今の岸田君のいらっとした気持ちを表していた。

あちゃちゃ・・・
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