右隣の彼
「わかったよ!」
岸田君の手が力なく壁から離れると、深いため息を吐き
腰に手を当て顔を傾けながら諦めたような表情で私を見た。
「何を言っても曲げない性格をよく知っているはずなんだけどさ~
 夏さんがあまりにも若社長を絶賛するからさ~。もう完全に
 俺の嫉妬です。」
「岸田君・・・・」
「あぁ~あ。やっぱり俺ばっかり焦ってんのかな」
資料のファイルを抜き取りながらつぶやく岸田君が何だかすごく愛おしく思えて
衝動的に岸田君の背中に抱きついた。
こんなこと普段いや、今までだってしたことないんだけど
好きだという気持ちと、愛おしいという気持ち、そしてほんの後ろめたさが
そうさせたのだと思った。
「先輩?」
いつもと逆パターンな行動に岸田君も驚いていた。
「ごめん。少しだけギュッとさせて、パワーが欲しいから」
颯太さんの強引さに負けないようにそして・・・・葵さんにも負けたくないから
そんな思いで抱きしめる腕に力を入れた。
おなかに回した手を岸田君はその手の上に自分の手を重ねた。

あったかい。

これで私は頑張れる…そう思った時だった。
岸田君が私のてを掴むとお腹に回していた手を離したのだ。
え?もうちょっとこうしていたいのにと思っていると
岸田君は回れ右をしてと向い合せになった。
「岸田君?」
岸田君の顔はほんのり赤く染まっていてそれだけでも
かなりの破壊力があって私の鼓動は跳ね上がった。

「もっとパワーを…上げるよ」
岸田君はにこっと微笑むと
私の顎に手をかけ持ち上げると岸田君の顔がゆっくりと近づいてきた。
私はここが会社の中だという事を知っていながらも
ゆっくりと目を閉した
そして二人の唇が重なり合った。

このパワー半端ないです。
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