右隣の彼
1階に着くとエントランスにカジュアルなジャケットにTシャツとジーパンの
イケメンが立っていた。
「すみません。お待たせしました」
思いっきり頭を下げると頭上から「頭あげろよ。別に待ってねーから」と少し照れたような
声が聞こえた。
頭を上げると颯太さんはとにかくここを出るぞ!と私をせかすように先に歩き出した。
その理由はすぐにわかった。
女子社員の視線が半端なかったのだ。
でもそれはある意味仕方のないことだ。だってとにかく目立つんだから
夏さんの言う岸田君よりもかっこいいというのはあながち間違ってないんだから・・・
会社を出るとすでにタクシーが止まっており颯太さんは私の背を軽く押しながら
私をタクシーに乗せた。
運転手に場所を告げるとタクシーがゆっくりと動き出した。

「よく彼氏がOKしてくれたな」
「え?」
彼氏がいるとは言ったが今の颯太さんの言い方だと
彼が社内にいることを知っているような言い方だった。
驚いている私を見て颯太さんは大きな声で笑った。
「あははは、お前のライバルが聞いてもいないのにベラベラしゃべるからな。
 彼氏、同じ会社の奴なんだろう?年下の」
そこまで知られてしまったのか・・・
それだけで葵さんの必死さが伝わってきたが、使えるものは何でも使うって
社長まで味方につけようとしてるのかと思うとやっぱり何だかとんでもない人と
ライバルになったと改めて思い、ため息が出てしまう。
そんな私をみて颯太さんは笑った。
「やっぱお前面白いわ。俺の前でそんな素の顔すんの会社の女子スタッフ以外では
お前だけだもんな・・」
颯太さんは視線をすっと窓に向けてフッと笑った。
たしかに私は颯太さんに対してはほかの上司や取引先相手とは違っていた。
年齢も同じだし、敬語を使わんでいいという颯太さんの気取らない性格が私をそうさせたんだと思う。
でもそれだけだ。
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