右隣の彼
「颯太さん…私」
こういったのは今回限りにしてほしい…そう言おうと思ったのだが
タクシーが目的地に止まり颯太さんが素早くタクシー代を払って降りてしまったため
いいたいことも言えず、重い腰を上げるようにタクシーを降りた。
そして車を降りて私は固まった。
だってそこは私のよく知っている店でそこのオーナーもよく知っている店で
「ここって・・・・」
颯太さんはニヤリと笑うと店の扉を開け先に店に入った。

もう何が何だか分からなく・・・・・・なってきた。
だってここ岸田君のお兄さん、駿さんのお店なんだもん!!!

もしかして今日一番緊張しているかもしれない。
だってお兄さんのお店ってどう考えても仕事での接待する場所としては
厳しいよね。
そして店に入ってお兄さんがびっくりする。
そして話が仕事とは全く関係ない話だったとしたら・・・
お兄さん岸田君に言っちゃう(かもしれない)
浮気じゃないんだけど…そう思われたら?
頭の中で最悪のエピソードが出来上がって顔が真っ青になった時

「いつまでこんなとこ突っ立ってんだ?駿さんが待ってるぞ!」
痺れをきらしたかのように颯太さんが扉から首だけ出した。
「え?・・・駿って・・・颯太さん駿さん知ってるですか?」
「知ってるも何も駿さんは俺の大学時代の先輩で、一美の彼氏の・・兄貴だろ?」
颯太さんの顔は完全にしてやったり顔だった。

・・・・えええええ!?
< 95 / 118 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop