矢野さん
 上から下へと舐め回すように見ていると、その視線に気付いた祐子さんが冷たい目で俺を見る。

「ちょっと、厭らしい目で見ないでくれる?」

 ギクッ――!

「い、いや……そんなつもりはないんだけど……ハハ」

 そう言って慌てて視線を外す俺に「ふーん」と、祐子さんは疑いのある声で返事をした。

「そういえば、昨日の事件ニュースでやってるよ」

「へ?事件?」

「橘くんを刺した男。通り魔だって。橘くん合わせて6人刺されたんだよ」

「――っ!?」

 6人!?まさかそんな大事件になっていたなんて……まじかよ……。

「幸い死者は出てないし犯人も捕まったみたいだけど、その犯人が橘くん以外はみんな女性を刺してるのよ。女性に振られた腹いせとかで襲ったのかもね……」

 そうだ……あの男は矢野を狙っていた。

 俺が咄嗟に庇ったけど俺が居なかったらあの時矢野は刺されていたかもしれない……。

「でも矢野さんが側にいて良かったね橘くん」

「え?」

 俺が側にいて良かったならわかるが、なぜ矢野が側にいて良かったになるんだ?

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