矢野さん
 はぁー!と、また深いため息を吐くと椅子に座って項垂れる。


「橘、今は一杯落ち込め。それでも矢野さんが忘れられないなら新しい恋をするしかない……相談に乗るからなんでも言えよ」


 吉澤の言葉に顔を上げると、向かいに座る吉澤が心配そうな顔で俺を見ている。


 吉澤……。


 ジーンと胸に熱いものを感じる。


 やっぱり吉澤はいい奴だ……。どっかの天然とは違って。


 こいつだけは俺の気持ちを察してくれる……。


「で、話変わるんだけど、今週末またコンパなんで宜しくな」


 そこにはさっきまでの心配そうな表情はなく、そう言うとニカッと笑う。


「……」


 吉澤……お前もか……。
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