矢野さん
「まじ!?行く行くー。橘も行くだろ?」


「行かねーよ!もう俺戻る」


 勢いよく椅子から立ち上がると、赤崎が俺を呼ぶのを無視して食堂を出た。


 どいつもこいつも!人が凹んでる時に慰めもしてくれないとは薄情な奴等だ!

 地団駄を踏むように苛立ちを込めて歩くその足で喫煙所へ向かった。


――――――――――
――――――


 ああ……美味い……。


 壁に寄りかかり煙草をフーと吐く。


 矢野に振られて溜め息ばかりだな……。


 片想いから見事なまでの玉砕……いい経験させて貰った。いや本当に……。


 それに自分にはない物が見えた……。矢野の様に、素直に生きて行きたいな……。


 そう思うと、天井を仰ぎ煙草を吹かした。

< 247 / 419 >

この作品をシェア

pagetop