もう一度、逢えたら…
その時だった。


ふと
俺が速水から目をそらし、
前を見ると、
そこに
遠藤が
立っているのが見えた。


手には
おしぼりを
握っているのが見えた。


「あ。」


俺と目があうと、
彼女は
聞いてはいけないものを
聞いてしまった
と言うような顔をして、


「これ。」

とだけ言って、
俺におしぼりを渡すと、
逃げるように
カラオケ店の中に
走っていった。


「やっべぇ、聞かれちまった?」

速水は
焦るように言った。


俺たちは
その場から
動けなかった。

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