生きなきゃいけない
2

 蓮華の住まいは3LDK都内のマンション。兄との二人暮らし。両親は健在。同じく都内だが…。彼女は兄と住むことを選んだ。彼女の兄の名は石榴。都内の会社でシステムエンジニアをしている。自慢の兄。優しい兄。いつも自分を見ていてくれる兄。
 季節は夏。半袖の制服に身を包み、長い栗色の髪は後ろで一つに束ねる。姿見で自分の姿を確かめる。
「目立つかな?やっぱり。」
 左腕の後面に貼られた、たっぷり血を吸ったカットバンを映し出した。
 もう止まってるか。
 さっとカットバンをはがした。まっすぐな切り口。まだかさぶたにはならない赤い筋が数本。
「この方が目立たないかもしれない。」
 呟いて彼女はダイニングに出て行った。
「朝飯できてるぞ。急がないと学校遅刻するだろう。」
「うん。」
 自分の席に座って、いただきます、というと、トーストに手を伸ばした。傷が兄に見つからないことを願いながら。
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