絶対に好きじゃナイ!
「お前がはじめてキスする相手も、身体を許す相手も、他の誰にも譲りたくねえと思ってたんだよ」
自分は"男の事情"なんて言っておいて、どの口がそんな台詞を吐くのかと思ったけど。
思ったんだけど、わたしも今では全部の"はじめて"が社長でよかったって思ってるから。
なんだかくすぐったくなって、堪えきれずにくすくすと笑ってしまった。
「笑うな」
「だって虎鉄、すごく欲張りなんだもん」
「うるせえな。好きな女なら、全部欲しいと思って当然だろうが」
今度はわたしに代わってムスッとむくれた社長。
8歳も歳上なのに、今日の社長は可愛くて仕方がない。
だからわたしはなんだか何でもできるような気がして、両腕を伸ばして社長の顔を引き寄せる。
そして社長がいつもしてくれるように鼻先に小さく、えい!っとキスをした。
すると社長はものすごく驚いた顔をして、ピタリと完全にフリーズしてしまった。
え、なんか言ってよ……
こっちのほうが恥ずかしくなるじゃん!
驚いた顔の社長と目が合っちゃって、わたしもつられてあたふたする。