絶対に好きじゃナイ!

「お前がはじめてキスする相手も、身体を許す相手も、他の誰にも譲りたくねえと思ってたんだよ」


自分は"男の事情"なんて言っておいて、どの口がそんな台詞を吐くのかと思ったけど。

思ったんだけど、わたしも今では全部の"はじめて"が社長でよかったって思ってるから。


なんだかくすぐったくなって、堪えきれずにくすくすと笑ってしまった。


「笑うな」

「だって虎鉄、すごく欲張りなんだもん」

「うるせえな。好きな女なら、全部欲しいと思って当然だろうが」


今度はわたしに代わってムスッとむくれた社長。
8歳も歳上なのに、今日の社長は可愛くて仕方がない。


だからわたしはなんだか何でもできるような気がして、両腕を伸ばして社長の顔を引き寄せる。
そして社長がいつもしてくれるように鼻先に小さく、えい!っとキスをした。

すると社長はものすごく驚いた顔をして、ピタリと完全にフリーズしてしまった。


え、なんか言ってよ……
こっちのほうが恥ずかしくなるじゃん!


驚いた顔の社長と目が合っちゃって、わたしもつられてあたふたする。
< 152 / 210 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop