絶対に好きじゃナイ!
「社長ってば、最近余裕がないっていうか、隠そうとする気がゼロよね」
そう言った紫枝さんに、結木さんがこくりと頷く。
「なんのことですか?」
「うふふ、いいのよ梨子ちゃんはそのままで。見てておもしろいもの」
お、おもしろいって、わたしが?
一体なんのことだろう。
気になったけど、紫枝さんは全然教えてくれるつもりはなさそうで、鼻歌なんて歌いながら自分の仕事に戻ってしまった。
それにしても、社長に余裕がないなんてそんなのウソ。
いつでも余裕たっぷりで、振り回されるのはわたしのほうなんだもん。
どんなに集中しようとしても、気づけば視線を引き寄せられちゃう。
薄茶色の瞳を鋭く細めて、とっても真剣な表情をしてる社長。
真摯で精悍な顔つき。
あの表情は、この会社に入社してはじめて知ったの。
それから、伏せたまつ毛が綺麗な扇形に広がって長くて魅力的だってことも最近知った。
わたしにキスをする唇が、たとえ奪うようなものであってもすごく優しく触れるんだってことも。