絶対に好きじゃナイ!

「あ、きたきた。あいつだよ」


わたしと隣に座る友だち、ふたりに気を遣って話をしていた上村さんが目ざとくその男性を見つけて言った。


「どうも、すみません。突然呼ばれたので、遅れてしまって」


センスのいい私服を着こなした男の人は、そう言ってわたしの前の席に座る。

短くさっぱりとした黒髪と、細いフレームの眼鏡がよく似合う。
柔らかな物腰で、だけどどこか魅力的で危険な香りがすると、わたしの勘が告げてる。

まあ、21年間恋人を見つけられなかった頼りにならない勘だけど。


「芹澤要といいます。一応高校教師なので、あまり大声では言わないでくださいね」

「あ、し、椎名梨子です。えっと……」


ん?

せりざわ、かなめ……?


「あれ? 梨子ちゃんって、あの梨子ちゃん? 懐かしいなあ、俺のこと覚えてない?」


眼鏡の奥の切れ長の瞳が、わたしを見てにっこりと笑った。

お、思い出した。

このウソくさい笑顔!
なんにも変わってないじゃない!
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