ショコラノアール~運命の恋~
謝られて、初めて、

あんなに時間が押したり、

合コンに間に合わなかったのは、

品物が予定通り届かなかったからだってことに気がついた。


でも、文句なんて言う気になれない。


なんだろう、このふわりとした感覚。




「あの?」

やだ、私ったらホントじろじろと、

見すぎでしょ。


あわてて視線をそらしながら、

早口で、捲す。


「間に合ったから、よかったけど、

 気をつけて……でも、あなたのせいじゃないですよね?」


本心だ。


持って出たバイク便の人が事故に会ったって聞いてたし、

代わりの人に文句言っったってしょうがない。




「いえ、荷物はきちんと届ける契約があるわけですから、

 遅れたんですから、

 お叱り受けることは当然です」


軽く首を伏し目がちに振る。


またさらりと髪が動く。



どきん♡


ヤダ、私ってば

 何ドキンとかしてるの?


 ふつ面な草食っぽい人に。


「今日は何か配達?」


那珂井さんが、

私のテンパリをさっしてか、

間に入って彼に話しかける。



「あ、いえ、この間来て美味しそうだったから、

 来てみました」


そうよ、何やってるの接客しなきゃ。


「し、失礼しました。

 ち、ちゅうっ注文がお決まりれしたら、

 かしこまりまります」


ぎゃっ、かみかみだ


「そうですね、ええとあまり甘くなくてさっぱりしてるものを」


「残念だけど、チーズケーキ系さっきので最後だったね。


フランボワーズのも、切らしてるし、

あっ、
なら、これがいいよ、

 ねえ、しのちゃんこれ!」


那珂井さんが奥から出してくるケーキを見てぎょっとした


「やだ、那珂井さんそれはちょっと、売り物じゃないから」


昼休みに作った、ケーキの試作品だったから

「じゃ、おにいさんこれは、売り物じゃないからサービスだよ」


「え、でも」


「いいだろ?しのちゃん」


って、那珂井さんこれダメって言ったら角が立ちすぎじゃない。


ずるいなあもぉ、でも、このひとなら食べてもらいたいかも。


「しょうがないですね。

その代わりまた、きてください。

それで、食べた感想教えてくれるなら、

特別に差し上げます」

私ってば上からいってるよ。感じ悪い……


「おにいさん、

それ、しのちゃんのコンクールのための新作の試作品だから、

心して食べなよ。」


「え、いいんですか?」

精いっぱいの笑顔を作って包みを渡した。


「まずくても、クレームとかなしで、よろしくお願いしますね。」


少しは感じよく見えたかな?


 





 


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