YUMERI〜女のコにはユメとキボウがあるのだ!〜
翌朝。
田吾郎は始発で帰宅した。久々の我が家よ!
「ただいま〜!」
裏口(自宅としては玄関)の鍵を開けて叫んでも反応がない。
「父さんの帰還だぞ〜」
するとダダダダッと階段を降りてくる音がした。この元気なのは希望梨だな…。
予想通り三女だった。父は両手を広げた。しかし娘は素通りした。
「お帰りッ!遅刻しそうだから、じゃねっ!」
昔の少女漫画ならトーストを口に挟んで走っているところだ。希望梨は制服のリボンを結びかけのまま、髪も寝癖のままだった。
疾風のように去っていく…。昔々の歌が田吾郎の心に過ぎった。
「……」
ちょっとがっくり来て、無言で台所に向かった。カチャカチャと食器の音がする。ホッとして、
「ケイ、ただい…ま」
妻に呼びかけた。しかし振り返ったのは妻ではなく義母だった。
「お、お義母さん?」
田吾郎は本当にびっくりした。
「ケイじゃなくてごめんよ」
棚から食器を出しながらミヨが無愛想に言う。
「いえ、そんなつもりじゃなくて…」
田吾郎は必死に弁明する。
「取材旅行から今帰宅したばかりなんですよ。お義母さんがいらしてるとはケイから聞いてなかったもんですから」
「ま、私が急に来たからね」
「何かあったんですか…?」
田吾郎のその一言にミヨは厳しい視線を向ける。
「あ、いや、その…」
小学生に戻ったような気分だ。
「ケイは店の備品がいるからとかで出掛けたよ。美沙梨と麻央梨は講義が午後からだとかでまだ寝てるよ。大学ってのは好きな授業選べるんだね、いいねぇ」
ミヨは遠い青春に想いを馳せるような表情だった。ミヨは高校を出てすぐ働いたから大学の事はよく知らない。
「僕も学生時代をよく懐かしく思いますよ。寮に入ってましたからね、その…」
田吾郎が青春を語ろうとするのをミヨが遮った。
「タゴさん、あたしゃしばらくここで厄介になるからね」
ミヨがそう言った時、田吾郎の手から荷物が落ちた。全身の力が抜けたのだ。
「さ、ケイの変わりっちゃなんだけど朝食まだだろ?作ったげるよ。何がいい?」
割烹着の袖をまくるミヨ。田吾郎は、自分がまだ故郷にいて、夢を見ているのだと思った。思いたかった。でも頬をつねると痛かった。
田吾郎は始発で帰宅した。久々の我が家よ!
「ただいま〜!」
裏口(自宅としては玄関)の鍵を開けて叫んでも反応がない。
「父さんの帰還だぞ〜」
するとダダダダッと階段を降りてくる音がした。この元気なのは希望梨だな…。
予想通り三女だった。父は両手を広げた。しかし娘は素通りした。
「お帰りッ!遅刻しそうだから、じゃねっ!」
昔の少女漫画ならトーストを口に挟んで走っているところだ。希望梨は制服のリボンを結びかけのまま、髪も寝癖のままだった。
疾風のように去っていく…。昔々の歌が田吾郎の心に過ぎった。
「……」
ちょっとがっくり来て、無言で台所に向かった。カチャカチャと食器の音がする。ホッとして、
「ケイ、ただい…ま」
妻に呼びかけた。しかし振り返ったのは妻ではなく義母だった。
「お、お義母さん?」
田吾郎は本当にびっくりした。
「ケイじゃなくてごめんよ」
棚から食器を出しながらミヨが無愛想に言う。
「いえ、そんなつもりじゃなくて…」
田吾郎は必死に弁明する。
「取材旅行から今帰宅したばかりなんですよ。お義母さんがいらしてるとはケイから聞いてなかったもんですから」
「ま、私が急に来たからね」
「何かあったんですか…?」
田吾郎のその一言にミヨは厳しい視線を向ける。
「あ、いや、その…」
小学生に戻ったような気分だ。
「ケイは店の備品がいるからとかで出掛けたよ。美沙梨と麻央梨は講義が午後からだとかでまだ寝てるよ。大学ってのは好きな授業選べるんだね、いいねぇ」
ミヨは遠い青春に想いを馳せるような表情だった。ミヨは高校を出てすぐ働いたから大学の事はよく知らない。
「僕も学生時代をよく懐かしく思いますよ。寮に入ってましたからね、その…」
田吾郎が青春を語ろうとするのをミヨが遮った。
「タゴさん、あたしゃしばらくここで厄介になるからね」
ミヨがそう言った時、田吾郎の手から荷物が落ちた。全身の力が抜けたのだ。
「さ、ケイの変わりっちゃなんだけど朝食まだだろ?作ったげるよ。何がいい?」
割烹着の袖をまくるミヨ。田吾郎は、自分がまだ故郷にいて、夢を見ているのだと思った。思いたかった。でも頬をつねると痛かった。