YUMERI〜女のコにはユメとキボウがあるのだ!〜
シネコン
昼休み。
いつものように鞄から昼食を出す。
そして、それがコンビニで購入した物である事に今更ながら気付く。
「くっそぉ…」
好物のソーセージパンをかぶりつきながらもつい悪態が出る。学校の近くにコンビニがあるので、つい買ってしまうのだ。読みたい週刊誌や漫画。コンビニには揃っている。
ふと、コンビニで本を買うのは希望梨一家への背徳行為のような気さえしてきた。
でも何でもかんでもBOOKSケイで購入する訳にも行かない。正直、タイトルを知られたくない本だってある。でもコンビニ業界だって飽和状態だよな…。
イスを器用に傾けてバランスを取って揺らしながらぼんやり考えた。
明日からは購買でパン買うかな…。食堂でもいいしな…。
稔が机の上のイチゴ牛乳に手を伸ばした時、背後から肩に手を置かれた。
「ギャッ!」
自分の声とは思えぬ悲鳴が飛び出た。
イスはバランスを崩したが、何とか持ちこたえた。イチゴ牛乳が少しこぼれた。
「うわ、すまん。そんなに驚くとは…」
恐縮して立っていたのは、伊坂透だった。陸上部仲間なのだが、三年間同じクラスになることもなく、特別親しくしている訳でもない。
スラッとした長身で、女子の間では山Pに似てる〜と騒がれている。本人は全然知らず、稔も偶然耳にしただけだったが。
「どした?部活の事?」
稔はイチゴ牛乳で汚れた制服を手で払っていた。
「あ、いや、そうじゃなくて…」
見る人が見れば、小池徹平と山下智久が会話している図になるのだろう。
伊坂がテイッシュを差し出したので、稔はサンキュと言って受け取った。
彼のお陰で汚したのだから礼を言うのも変な話だな…と思いながら。
「何だよ、歯切れ悪いな」
稔は伊坂に話を促した。
「あぁ、うん…。あのさ、お前と桜井さんて…」
何で皆この話ばっかりするんだ。
稔は気を悪くしてイチゴ牛乳をキューっと飲んだ。
「両想いなのか?」
稔はイチゴ牛乳を噴き出した。喉につまって咳が出た。
「うわ、すまん、あの…」
伊坂は今度は袋ごとテイッシュを差し出した。
「両想いなんかじゃねぇよ」
喉がヒリヒリするのを感じながら、稔は希望梨が友達と楽しそうに話しているのを見つめた。
「じゃあ、俺がデートに誘っても気にしないよな?」
伊坂の言葉に、気持ちとは裏腹にうなづいていた。
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