YUMERI〜女のコにはユメとキボウがあるのだ!〜
それからどしたの。
また客席に座って、ぼんやり映画の予告を観ていた。
希望梨はばあちゃんに早くブロマイド送りたいな…と考えてからハッとした。
ばあちゃん、じいちゃんが最近元許婚と会ってるって公園で言ったよね。
でも帰宅したらじいちゃんは老人会の友達だって言って…。
ばあちゃん納得してたけど…。
同じ老人会に元許婚が!なんて事ある?
希望梨の中に疑惑が渦巻き始めた。
ドリンクだけにして、時々飲みながらスクリーンを観る稔は希望梨が険しい表情になっているのに気付いた。
…なんなんだ。第2部は難しい展開になるのか?
希望梨に声をかけたかったが何といえばいいか分からず、沈黙した。

アンとギルバートが愛を育んでいく。
稔は居心地が悪かった。
映画館で恋愛物を観るのは初めてだ。
大スクリーンではやっぱりド迫力のアクション物だろう。
『インディ・ジョーンズ』は夏の公開だから観に行かないとなぁ。
雑念が入っていた為、ぼんやり観ていた。
伊坂だったら気の利いたコメントをしていたんだろうか。
…あいつ本気なのかなぁ。
「代理」としてじゃなくて、ちゃんと約束して来たかっ…。
そこまで考えた所で、また希望梨のすすり泣きが聞こえた。
ハッピーエンドだ。
感涙してるって事?
稔はポケットを探ってハンカチを取り出した。
サッと希望梨に手渡してから、しわくちゃのハンカチだった事に気がついた。
しまったあぁっ!
希望梨はハンカチを一瞬見つめて、クスッと笑った。
「ありがと」
ハンカチを使ってくれた。

「ちゃんと洗濯して返すね」
クレーンゲームをしながら希望梨が言った。
「いや、別にいいけど…」
稔は希望梨が操作するクレーンを凝縮していた。
二人共熱中して、相手の話を聞いていなかった。
「もうちょい右…よし!」
ボタンを操作して、クレーンの位置が決まった。
パンダの中位のサイズの縫いぐるみがターゲットだ。
カポッ…。
いい感じでクレーンが縫いぐるみに挟まった。
「よっしゃ、カモーン!」
希望梨がそう言うのを聞いて稔は吹き出した。
「どこの国の人だよ、お前」
希望梨はムスッとした顔をしたが、クレーンの動きに集中した。
ウィーン…
一瞬縫いぐるみが持ち上がり…
−ボソッ。
あぁ無情。
レ・ミ・ゼラブル。
「クレーン握力弱っ」
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