YUMERI〜女のコにはユメとキボウがあるのだ!〜
次のステップ
「稔に受験番号教えてたの?」
CD屋をうろつきながら、ブーちゃんが聞く。
「ううん、教えてない」
洋楽のCDを手にする。
二枚買えば20%OFF!
赤いステッカーが目立つ。
輸入盤だと元から安いなぁ…などと考えてブーちゃんの話を聞いていなかった。
「……」
ブーちゃんが黙り込んで初めてそれに気がついた。
「ご、ごめん私から呼び出しといて!」
「いや、別にいいけど…」
表情からは良さそうには見えない。
「とにかく、稔が先に希望梨の番号を見つけた訳だ」
「ううん、それがハッキリしないの」
ミュージックビデオが流れる液晶テレビに目線を移した。
「は?」
ブーちゃんはTHE BEATLESのコーナーを見ていた。
CDを探る手が止まった。
「私も稔だと思ったんだけど、辺り見ても居なかった」
「受験生でごった返してたから見失しなっただけだろ」
「うーん…」
「本人には聞かなかったのか?」
THE BEATLESのCDの品定めをしながらブーちゃんが尋ねた。
「…うん」


あの日、合格者はこちらで手続きを…という誘導された先に稔がいた。
受かった喜びとさっきの出来事で困惑したまま列に並んだ時、後ろに並んだのが涼子だった。
「私、岸中涼子」
清楚な少女が手を差し出した瞬間をよく覚えている。
初対面なのに、同じ苦難を乗り越えた同志だからか、すぐ意気投合した。


「…で、何で伊坂ってやつと付き合うんだよ。稔だろ、稔」
CDの会計をしながらブーちゃんが息巻いた。
「…何で皆くっつけたがるの?私と稔は蛇とマングース。水と油」
希望梨は両手でバツマークを作った。
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