YUMERI〜女のコにはユメとキボウがあるのだ!〜
過去と今と未来
喫茶レインボー。
虹(レインボー)の向こうにあるのは…?
オズの魔法使いのドロシーが見つけたのは何だったか。

祖父母と孫娘は、静かにモーニングを食べていた。
「…どうして言ってくれなかったの?」
ミヨが沈黙を破った。
「傷つけたくなかったからだ」
創介は黙々と目玉焼きを口に運んだ。
「こんな形で知る方が傷つきますよ!」
ミヨがそう言うのを、希望梨は黙って聞いていた。
今、口を挟むのは得策ではない。
目の前でワッフルのバターが溶けて、美味しそうだった。
「しのさんはいつ亡くなったんです?」
「去年の夏だ」
「…そうでしたか。私より二つ上なだけだからまだまだお若かったのに…」
「去年の春、聡子さん…さっき会った娘さんから連絡があってな」
創介は紙ナプキンで口の回りを拭った。
「…末期ガンで余命いくばくもないと。私が婚約を破棄して家を飛び出してから、しのさんは仕事に出たそうだ」
「良家のお嬢さんだから働く必要なかったでしょうに…!」
ミヨは目を見開いた。
「親が決めた許婚とはいえ、婚約破棄されたのは堪えたろうな。気の毒な事をした」
創介が言うと、ミヨはうなづいた。
「女性も自分で生きていく時代だ、と働く事にしたそうだ。そこでご主人と出会ったんだ」
「そうでしたか…」
「そのご主人は、しのさんが亡くなってからすっかり気落ちして今は施設で暮らしているそうだ」
「まぁ…」
ミヨは言葉が見つからなかった。
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