それだけで、キセキ。
「そんなこと言っちゃダメだよ。マジで我慢できなくなる。」

「.......いいよ。」

「智子、さん?」

「爽太くんといるとホッとする。だから、もう少しそばにいてほしい........。」



ベッドの上で横座りしている私と一旦目を合わすと、彼は視線を反らして、しばらく黙ったままでいた。

その表情から動揺しているのがわかる。

呼吸の音しか聞こえない静けさの中、沈黙が続けば続くほど、鼓動が速まって行く。

ドキドキし過ぎて、息苦しくなるくらい..........



「じゃあ、智子さんのこと、本気で好きになっていい?」

「.........うん。」



やっと出て来た言葉に頷くと、彼は微笑みながらゆっくり立ち上がり、ベッドに腰かけ、私を抱きしめた。

頭からすっぽりと、とても大切そうに。



彼の腕の中は温かくて、心地良くて、落ち着いて........

緊張の糸がプツンと切れたみたいに、涙がこみ上げて来る。

私、何で泣いてるんだろう。

こんな時に、泣かなくたっていいのに。



「泣いてるの?」

「......ううん。」

「泣いてもいいよ。」

「やだ。」

「やっぱり、智子さん、可愛い。何か、ほっとけない........。」
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