あの夏のキミへ
靴箱を開けると、予想はしていたが当然のように上履きは入っていない。

田中さんたちが隠したのだろう。

もう慣れたけど。

ないものはしょうがないので、わたしは靴を靴箱に脱ぎ捨てたまま何も履かず屋上に向かうことにした。

部活はたいてい体育館、音楽室、グラウンドしか使わないため、廊下は電気が消え、もぬけの殻で少し不気味だった。

耳が痛くなるほどの静寂の中に、ペタリペタリという足音だけが響いてなんとも寂しい。

あの日と、同じように。
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