僕と少女と夏休み
僕は…。なにをしたんだろう。

僕は…。何処にいるんだろう。

僕は…。

魔が差したんだ。殺す気なんてこれっぽ

っちもなかったんだ。

殺す気なんてなかったんだ。

佐々木日奈を…。

あの後何が起こったのかあまり覚えてい

ない…。だが、カンニングの罪を被って

くれと言われ、殺すといわれ、頭が混乱

したんだ。このままじゃ罪を僕が被る。

被ったら学校にはいけない。どれほどの

屈辱なのか。被らなかったら殺される。

どのみち逃げ道はなかったんだ。僕はな

んだってする。自分のためなら。僕は悪

くない。あいつが先に殺すといい、ナイ

フを突き出したんだ。人目につかない路

地裏で…。僕はナイフを反対に向けてあ

いつの手を押しただけ。ただそれだけだ。


タダ…ソレダケダ。


このまま血まみれの彼女を路地裏に捨

てておくわけにはいかない。だから森に

連れてきたんだ。死体を引きずる音。人

はこんなにも弱く、醜いものなのだとあ

らためて実感した気がした。今は2時

半。2時間穴を掘って埋めたら、5時には

帰れるかな?


『面倒くさい事になったな。』


さっきまでだったら『お前が悪いんだろ

う』とか口答えしたかもしれない。しか

し今では紫色に染まった佐々木の唇は冷

たく、動きそうにない。目を見開いて、

だらしなくでている舌は佐々木の綺麗な

顔立ちを台無しにしている。しかしお腹

からでている鮮やかな血はその綺麗な顔

に花を添えているようだ。


『天国でお幸せに…。』

『いや…。こいつは地獄かな。』

あははははははあはははは。笑いが止ま

らない。ざまぁ ざまぁ ざまぁ ざまぁ。

こいつは…。ただのゴミだ。

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