オレ様探偵とキケンな調査
今思うと、オレは突きつけられた現実から逃げたかっただけなんだ。


自分が苦しみから逃れたかっただけなんだと思う。


亨と玲奈を儚い希望で縛ることしかできなかったオレに、父であり、夫である資格なんてなかったんだ。


もっと亨を見れば。


もっと玲奈の心を気遣うことができたのなら。


違う過去と今と未来があっただろう。


今更気付いたところで何も得る物などない。


だけど、別れて以来、2人を想わない日は一日もなかった。


ちゃんと飯を食っているだろうか。


金は足りているだろうか。


2人とも泣かずに前を向いているのだろうか。


…なんて。


後ろばかりを振り返っているオレが心配するのもバカな話だが。


願わずには、祈らずにはいられなかった。
< 102 / 245 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop