オレ様探偵とキケンな調査
「あ…」


帯金さんを迎えた中庭の2人は…。


あたしより少し年上のショートカットの女性と、車椅子の男の子だった───。


これ以上近づけないので、3人の会話は聞こえない。


でも、わかる。


あの女性と男の子は…帯金さんの失った家族だ…。


3人はぎこちない笑みを浮かべて、しばらく冬の中庭で話し合っている。


元々は“一緒”だったはずの3人の家族が、今はバラバラに通じ合っていないのが遠くからでも見てとれる。


少し雪混じりの雨が降ってくると、帯金さんは車椅子の男の子の頭に手をやり、女性に茶封筒のようなものを差し出す。


女性が遠慮がちにそれを受け取ると、帯金さんは中庭を出て、あたしの方へ進んできた。


その鈍く光った目はあたしを捉えていて、ごまかそうにも隠れようのないあたしは、軽く会釈してその場から立ち去ろうとするのに、長くゴツイ手が掴んで離してはくれなかった。


「椿、尾行下手すぎ」


それだけ言って帯金さんは、あたしの左手を掴んだまま、屋上へと連れて行った。
< 109 / 245 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop