オレ様探偵とキケンな調査
事務所を出ると、容赦ない12月の北風があたしの髪を冷やす。


信吾さんに、


「椿は長い髪が似合うね」って。


言われて伸ばし続けてきたロングのウェーブ。


欲しかった愛、守りたかった髪。


でも、もうこの髪も。


信吾さんにすくってもらって撫でてもらって、キスを落としてもらうこともないんだ…。


だったらこんな髪、邪魔なだけ。


あたしはクリスマスムード満開の街を脇目も振らず歩いて、流行ってなさそうで地味な美容院の前で足を止めた。


いつものサロンじゃ、帯金さんの言う“セレブ夫人的雰囲気”を壊せないと思ったから。
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